危険性は?頚椎椎間板ヘルニアの手術のリスクについて
つらい椎間板ヘルニアを手術によって直したくてもなかなか踏み切れない...。首の手術は何か重大なリスクがありそうで怖いですよね。
手術によって起こる可能性のある後遺症は?どの手術が一番安全なの?
ここでは椎間板ヘルニアの手術で起こりうるリスクについてまとめました。事前によく知っておくことで医師への相談がしやすくなりますよ。
椎間板ヘルニアの手術によるリスク
椎間板ヘルニアの手術によるリスクには、どのようなものがあるでしょうか。
手術法によって異なるリスクの種類や、手術に共通して起こりうるリスクについてまとめました。
PLDD
レーザーを用いて椎間板中心部を空洞化させ、圧迫を軽くする治療法。切開する手術に比べ傷が残らず、体に負担をかけずに治療でき、軽度のヘルニアに適用されます。
比較的リスクの少ない方法ですが、レーザーの制御をうまく行なわなければレーザーで周辺の組織を傷つけるリスクがあります。わずかな例ですが、手術で空洞化させた周辺の骨が壊死してしまった例もあるようです。
また重症例ではPLDDが適用できず、手術を行ったとしても効果があまり見られないというケースもあります。
内視鏡摘出手術
少しの切開で手術ができるため、近年内視鏡摘出手術を行う例が増加しています。
内視鏡手術は肉眼に比べて術中の視野が狭く、立体的に患部をとらえることが難しいため、熟練した医師でなければリスクが大きくなります。
状況によっては内視鏡手術を行っている途中で通常の切開手術に切り替えることもあるようです。
切開
切開法は最も古くから行われるヘルニア手術。これまでの治療例が多いため、比較的医師の技量に依存する部分が少なく安全な治療です。
しかし、切開部分が大きく傷が残りやすい、周辺の組織まで傷つけるため回復に時間がかかるなどのリスクがあります。
また、施術部位によって様々な合併症が引き起こされるリスクがあります。
手術によって引き起こされる可能性のある合併症
PLDDの合併症のほとんどは椎間板炎で、発生率は0.3%~1.0%となっています。この治療法が実施されてから、頚椎椎間板ヘルニアの再発率は23年間で4~5%です。リスクが少なく、重大な合併症を引き起こす可能性はほとんどありませんが、化膿性椎間板炎・出血・創部感染・熱傷性脊椎炎といった合併症を引き起こす危険性があります。
PLDDが治療法として出てきたのは20年余りなので、今後も観察は必要ですが、メリット・デメリットを天秤にかけてもバランスのとれた治療法と言えるでしょう。
化膿性椎間板炎
血液から細菌が入り込み、椎間板を化膿させてしまう病気です。急性の場合は化膿した部分に激痛がはしり、高熱を伴うのが一般的。抗生物質を投与しながらギプスや装置を装着し、安静を保つことで改善をはかれます。
創部感染
治療した部分に細菌が侵入して、患部に腫れや熱、鈍い痛みが生じる病気です。感染は局所から全身に及ぶ可能性があり、悪化すると患部以外にも影響を及ぼす可能性があります。手術後、傷口を保護するための「ドレッシング材」の使用方法に気を付けたり、消毒液を使わなかったりと、意識することで予防できます。
熱傷性脊椎炎
手術に使用するレーザーによる熱で患部がやけどを負い、脊椎が炎症を起こしてしまう疾患です。外用薬や創傷被覆材(ドレッシング材)を使用した処置によって治療していきます。
内視鏡摘出手術の合併症
内視鏡摘出手術は約1時間程度の短い手術で行われ、術後の痛みも比較的少ないといわれています。内視鏡摘出手術治療の合併症として、主に、血種・感染症・硬膜損傷・神経損傷・髄液漏が挙げられます。可能性はゼロではありませんが、どれも1.7%以下で発症率はかなり低い数値です。また再発率に関しては、4~14%と言われていますが、必ず再手術となるわけではなく、再発生しても自然に治癒されている傾向にあります。
血種
稀にですが、手術後に起こることがある血腫。血のかたまりのことで、たまった血が脊髄神経を圧迫してしまい、痛みや麻痺が発生する可能性があります。通常ならしばらく様子をみることで自然と消滅していきますが、状況によっては除去手術が必要です。
感染症
手術時には皮膚を切開するため、少なからず出血があります。なるべく少量になるようにどの病院でも心がけられていますが、出血量が多い場合は輸血が必要。使用される血液はウィルスなどにかかっていないか検査が行われていますが、100%ではないため稀に感染症にかかることがあります。
硬膜損傷
硬膜という、神経を包んでいる膜が破れてしまう病気です。硬膜の中には脳で作られた水が入っていてそこに神経が浮いている状態なのですが、硬膜が破れると中の水が流出してしまいます。神経に細菌が入りやすくなり、髄膜炎が生じるリスクが高まるため危険です。
神経損傷
頚椎のそばには大事な神経がいくつも通っています。内視鏡摘出手術は小さな切開で治療ができる比較的リスクの少ない手術ですが、その治療には高いレベルが求められます。少しでも挿入場所を間違えると、神経を傷つけることになりかねません。
髄液漏
脊椎を覆い脳で作られた水が溜まっている「硬膜」が破れてしまい、皮膚の下に水がたまってしまう症状です。細菌が入り症状が悪化すると、細菌性髄膜炎が起こり重篤な合併症となるので気をつけなければなりません。
切開法
切開法によって起こる合併症は主に施術部を大きく切開することによるもの。切開により神経を傷つけると痛みやしびれ、感覚の障害が残り、なかなか治らないという事も。また、切開部位によって合併症が異なります。
- 前方除圧術
首の前方を切開する手術。前方の錐体を削って空洞をつくり、圧迫を少なくします。
手術によって声がかすれてしまったり、ものをうまく呑み込めなくなることも。合併症は患部の神経・脊髄の損傷・髄液漏・血種・感染・深部静脈血栓症などが挙げられます。
- 後方除圧術
首の後ろの方を切開する手術。脊柱管の後ろの部分の骨を削り、神経の圧迫を取り除く術式です。
広範囲に切除する場合は術後に脊椎が不安定になることがあり、固定器具を取り付ける必要があります。
合併症は脊髄や神経の損傷・髄液漏・感染・深部静脈血栓症などが挙げられます。
深部静脈血栓症
深部静脈に血栓(血のかたまり)ができてしまう病気です。血流が悪くなるため、脚や腕に腫れが生じることも。血栓が肺に達すると呼吸困難になる危険性もあります。血栓を大きくしないために、抗凝固薬(血をさらさらにする薬)を使用するのが一般的です。
手術によってリスクに差がある
ヘルニアの手術をすると患部を取り除くことができ、痛みや腫れの原因を根本的に解決できます。
しかし手術には手術に伴う周辺の神経の損傷や切開後の傷など必ずリスクがあります。また重度のヘルニアの場合、すでにある痛みを手術で取り除くことができるとは限らないのが現状です。
状況によっては手術ではなく、他の方法を選んだ方が良いケースもあるため担当医と良く相談することが大切。
手術の種類によって伴うリスクが異なることも良く把握しておきましょう。医師によって得意な手術が異なることもあるため、事前によく調べておくことがリスクを減らすことにつながります。
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