【保存的療法】牽引療法
ここでは、頚椎椎間板ヘルニアの保存治療で行われる牽引療法についてまとめています。
牽引療法とは
牽引療法は理学療法であり、専用の機器を使って首を伸ばす運動を繰り返す治療法です。1日に2~3回、10分ほどを何回か繰り返します。ヘルニアの初期症状である痛みやしびれ、倦怠感を感じている人が受ける治療です。この段階でMRIの画像診断を行なうと、椎間板が定位置より少しズレていることが確認できます。このとき牽引療法を受けると症状が回復傾向にむかうことから、昔から行なわれている治療方法です。体に負担をかけないことから、高齢者や手術療法を希望しない人にもすすめられています。
牽引方法のメリット
メスを入れないため体への負担が少ない
牽引療法は、専用の機器を使って首を伸ばすことで、こわばっていた筋肉をほぐす働きやズレてしまった椎間板を元の位置に戻す働きがあります。手術のようにメスを入れて体に傷をつけることがなく、薬物治療のように薬の副作用もありません。理学療法士や医師の指導のもと、正しい方法で行えば、効果が高く安全性の高い治療といえるでしょう。
自然治癒力をアップさせ、元の位置に椎間板を戻す働きがある
頚椎部分を伸ばしたり、引っ張る牽引を繰り返したりすることで周りの筋肉の緊張が緩和されて、血液が循環し、自然治癒力がアップする効果があります。また、硬くなった関節を引き離す効果もあるため、椎間板の位置を元に戻す働きも期待できます。
牽引方法のデメリット
医師の診断により牽引療法が受けられないことも
牽引療法は、骨粗鬆症や骨軟化症といった骨に異常のある方や炎症性脊椎疾患の人には行えません。その他にも全身の衰弱が激しい、がんなどの腫瘍の骨転移がある人も受けられないようです。自分で健康器具を使って牽引療法を行う人もいるようですが、非常に危険ですので自己判断で牽引療法を行うのはやめましょう。
急性期の頚椎椎間板ヘルニアの症状には効果がない
頚椎椎間板ヘルニアでも炎症を起こしている場合は牽引療法を受けられません。痛みが悪化したり、牽引によってその反動で痛みが強くなってしまう場合もあります。そのため、ヘルニアの進行度合いを医師に診断してもらってから受けるようにしましょう。
牽引方法の治療の流れ
- 医師の診断を受けてから治療に入ります。牽引療法を行うのは、画像診断で椎間板のズレを確認した場合や、牽引療法の適用があると医師が判断した場合のみです。自己判断で自宅の健康器具などを使って牽引療法をするのはおすすめできません。
- 理学療法士や医師が専門の専用機器を使い、一定の力を加えつつ、秒単位で牽引を行います。基本的には顎を軽く引いた状態で8分~10分断続的に行います。力の入れ具合は、患者さんの体重の5分の1程度が目安です。牽引療法を受ける本人の調子によっても異なります。
- 牽引療法は、マッサージなどと組み合わせることで効果を発揮します。もしも一定期間牽引療法を受けて効果がない場合には、別の施術が検討されます。
費用の目安
保険が適用されるので治療費用は比較的安く、1回数千円、1ヶ月で3~4万円程度です。保険適用されない整体やカイロプラクティックで他の治療も並行して行ったりすると費用が高くなります。
治療を受けた人の口コミ
- 初期の椎間板ヘルニアだったのですが牽引で痛みが軽くなりました。(30代・女性)
- 牽引している間はとても気持ち良く、牽引後は痛みが随分軽減されたと感じます。(40代・女性)
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実は危険な牽引療法
牽引療法は理学療法であり、専用の機器を使って首を伸ばす運動を繰り返し行う治療法です。1回10分ほどの運動を1日に2~3回繰り返します。ヘルニアの初期症状である痛みやしびれ、倦怠感を感じている人が受ける治療です。この段階でMRIの画像診断を行なうと、椎間板が定位置より少しズレていることが確認できます。
このとき牽引療法を受けると症状が回復傾向にむかうとし、古代ギリシャ時代から取り入れられている治療方法です。体に負担をかけないことから、高齢者や手術療法を希望しない人にもすすめられています。しかし、近年ではこの牽引療法を危険視する声があがっており、厚生労働省もその危険性について言及しています。
厚生労働省が指摘する牽引療法の危険性
厚生労働省によるとカイロプラティクと称して牽引治療を行う店が急増していると指摘しています。カイロプラティックは有効性が明らかになっていません。そこで厚生労働省は「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究会」を設置してカイロプラティック療法の有効性について検討を行ってきました。しかし、脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究会の報告によると牽引治療による科学的な根拠はいまだに判明していません。厚生労働省によると長期間の牽引療法で症状が良くならない場合は他に原因がある可能性が高いので医療機関で検査を受けることを勧めています。
アメリカで実際起きた牽引療法が原因とされる事故例
アメリカでは2016年に牽引療法を巡って事件が話題で持ちきりになりました。
アメリカロサンゼルスに在住する女性が首の痛みに悩んでいました。数日前に首をひねりその時から痛みを感じていたのです。しかし我慢すればなんとかなるだろうと彼女はそのまま放置していましたが、その後も首の痛みが良くなることはありませんでした。
次の日になっても痛みは相変わらずでした。そこで彼女は友人に勧められたカイロプラティックに行き、施術を受けました。周りの人がよく使っている治療の一つでしたし、このとき施術を担当したドクターは専門大学で4200時間以上のカリキュラムを修了し、学位を与えられていた優秀なドクターで、安心して施術を受けこれで回復するだろうと思っていました。
しかし次の日も首の痛みは回復せずに彼女は再びカイロプラティクでの施術を選びました。首を引っ張ったり、骨の矯正をはかる処置をした後、彼女の身に最悪の事態が降りかかります。その8時間後、頭に割れるような頭の痛みが走り、そして手足のしびれにおそわれていました。
その施術によって彼女の椎骨動脈には裂け目が生じ、血液が脳で詰まりしばらくして脳梗塞を発症。救急車で病院へ搬送され、緊急手術をするも回復する様子はありませんでした。最終的に脳死と判断され、彼女は帰らぬ人となりました。
カイロプラティックはそもそも身体がもつ本来の能力や機能をベストな状態に調整することが目的の施術です。痛みを完治させるものではないため、こういった最悪のケースが生じる危険性があります。きちんと病院で診察をしてもらい、専門医の判断で治療をすることをおすすめします。